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呪術廻戦_名前を呼ぶただそれだけで。

第11章 繋ぎの風は捕らわれ影はひそむ




手元に届いたストールを伸ばし、目の前呪霊を捉える。しかしストールはねじ曲げられる。

"…やめてっ!針、私を奴から離して!!"

脳内に直接響く声。この声は七夕のあの日私の前に現れた女性の声だった。…呪具と意思疎通を取れるなんて知らなかった。

呪具を通して初めて聞いた彼女の声に驚きながらも私は慌てて奴に絡みつく催涙歌を引き離すように引っ張りあげた。

生物以外の形も変えられるの?…いや、先程催涙歌は私に話しかけてきた。つまりは魂だとかそういう部分に奴の能力は作用するのかも知れない。…となると後の手段は拡張術式である我幻悉糜(がげんしつび)だが…。

「…ふぅん、面白い呪具だね。主人に話しかけられるんだ。呪具を改造したことはまだないなぁ。…ちょっと貸してよ。」

こちらへ向かって走り出す呪霊。そして催涙歌を奪おうとして間髪入れずに素早く手を伸ばす。避けることで精一杯な私は防戦一方でなかなか拡張術式を行うための会話をすることができない。

嬉しそうに私へ攻撃する奴の姿は無邪気で、まるで新しいおもちゃを与えられた子供のようだ。

「…っ呼出!でっかい岩!!!!!!」

キリがないと思った私は、私と奴の間を隔てるような岩を呼び出した。どこからともなく出現した岩はドシンと音を立てて石畳の地面に腰を下ろす。奴が呆気に取られているうちに私は後ろへ下がり距離を取る。そして声を上げた。

「……悠仁くんならここにはいないけれど。それとも何か別の目的があるのかしら。」

「ん?お喋り?いいよ、俺は話すのは嫌いじゃないからね。」

身構えていたやつは両手を上げて、その手をそのまま頭の後ろで組んでにこりと笑った。会話をする姿勢を見せた相手に少し安心しつつも警戒体制を取る私は岩越しに話を続けた。

「………名前は?」

「内緒。五条悟の側近に厄介な呪言師がいるから教えるなって言われてるんだよね。君、それだろ?」

…なんだ、バレてるのか。というよりバレてるなんて人間側(こっち側)に内通者がいる?悟の読みが当たったわね…。

そっちはまぁ後でなんとかするとして、名前を教えてくれないならいよいよ拡張術式をする必要があるな。さすがにこっちはバレてないとは思うけど…。
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