第10章 愛に及んで屋をつくり、鳥はなく
同日昼間、車内にて。
伊地知は後部座席に座る五条の顔色を伺う。
「五条さん、その頬にある手形どうしたんですか…?」
「うるさい伊地知、黙って。」
「あ、はい…」
おそらく女関係だろうと察した伊地知はこれ以上聞くまでもないだろうと口を塞いだ。
そんなことを知る由もない私は、一方で今朝方彼氏に同棲宣言されてしまったので慌ててプランを練る。どちらかの家に片方が住み移るのが1番楽だろうと考えたのだが…。
「……私、先生の家行ったことない。」
……寮ともう一つ避難先の家があるとか聞いたことはあるけど…。たぶんきっと避難先の方は私の家よりはいいところなんだろうけど…。まぁ私も特に今のこの家に未練があるわけでもないので先生の家に私が移る形で引っ越しをすることになった。
そしてさらに翌々日。窓から差し込む朝日に照らされながら私は普段任務で着用している服を身にまとい、よしっと気合を入れる。
個人的にお願いをして補助監督に私の呪具を格納している倉庫の見張りを頼んだ。私の家には五条先生がいる。ちなみに今私は五条先生の家にいる。
準備はできた。
「さて、始めましょうか。」