第9章 千をこえた古はかれ不、磨かれる
明らかに困った顔をする虎杖くんを見てようやく冷静になる。後ろで頬に手を当ててしくしくと茶番を打っている先生を無視してコホンと咳払いをする。
「ごめんね、話が逸れたわ。ちょうど区切りもいいし休憩にしましょうか。………ところで。」
私はソファから立ち上がり、先程平手打ちを食らわせた先生の方を見る。
「先生、もう約束の時間じゃないの?早くしないと夜蛾学長とあのジジイが顔合わせちゃうんじゃない?伊地知さん脅した意味なくなるわよ。」
「あれ?もうそんな時間?」
先生はすくりと立ち上がって部屋の時計を確認した。本当だ、と呟くとゆっくり階段へと歩いて行った。
しかし、扉の前まで歩くとピタリと急に止まった。何かと思えば、こちらへすごいスピードで振り返る。
「浮気したら先生怒るからね!!」
「……はいはい、いってらっしゃい。」
…なんだそんなことか、と思い呆れながらも手をひらひらと振って先生を見送る。
今の一瞬でどっと疲れたな。…ふぅとため息をついてソファに座り直す。
「虎杖くんお腹すいてない?家に確かまだ作り置きがあったはずだから、それでよければ。」
「おお、まじ?めっちゃ腹減ってたんだよな〜ここ最近コンビニか外食ばっかで手料理ちょー嬉しい。…あ、でもいいの?こっから取りに行くのめんどくない?」
「……ああ、それは大丈夫よ。"呼出"作り置きタッパー、お箸2膳、それから……もう面倒くさいから"炊飯器"ごとでいいわ。あとしゃもじもね。」