第8章 槿の花びらはただ一つのみ朝をむかえる
「好きだよ、針。」
その言葉が胸のうちを徐々に熱くさせる。火照った顔の温度は私の顔を包む先生の手に伝わっているだろう。
なんだかもっと恥ずかしくなって強く結んだ瞼を開けることができなかった。そんな私を見て先生はくすりと笑った。笑った息がかかってくすぐったい。
「可愛い、もう一回………ん……」
「…っ……!?」
今度は先ほどよりも軽い口付け。しかし啄むように何度も何度も唇を重ねる。私の唇の間に先生の下唇が挟まって私の上唇を喰む。それは唇を重ねるごとに深まっていき、気がつけば2人とも息が荒れていた。
「あー、駄目だ。我慢できない…。」
やがて私はソファに押し倒された…のはよかったが、これから初めてを体験すると考えたらまた別の恥ずかしさが込み上げてきた私は先生の胸板を押し返した。
「まっ、待って!そもそも私たち付き合ってないし、いやさっきまでは抱かれたいと思ってたけど!?……でもやっぱりいざとなると緊張するし、だから………」
「じゃあ付き合えばいいじゃん。てか僕さっき告白したよね?そういえば針の返事まだ聞いてないな〜」
「へっ!?」
思わぬ返しに間抜けな声が出てしまう。先生の意地悪な笑みにどこか反撃めいた部分を感じる。お預けをくらったそのお返しといったところだろうか。
「で、どうなの?僕のこと好きなの?」