第5章 人の心は一つ、つねに新しきものなり
「あ、針〜。遅いじゃないの、なんかしてた?」
戸惑う私に五条先生はのろのろと近づいてきて手を上げた。殴られた少年は後ろで咳き込み膝をついている。高専の生徒だろうか?先生はそんな生徒を気にも留めず説明を始める。
「この子、虎杖悠仁。宿儺の器。んで今は死んだことになってる。訳あって生き返って僕の元で修行中〜。おけ?」
「………………………はぁ!?!!?!?!!?この子が例の器の子!?…ってしかも死んだことになってるって、てか生き返ったって何!全然説明不足なんだけど!」
「いや〜僕も説明したいのは山々なんだけどもうすぐで待ち合わせの時間に遅れるしそれはまた今度ってことで。」
いろいろ急展開すぎて頭が追いついていかない。というかなんで私なのよ…。
ぐちぐちと先生を責める私が気になったのか、ピンク髪の少年は呪骸を抱えながらこちらに寄ってきた。私を見て不思議そうな顔をしている。
「誰この人、先生の後輩?」
「悠仁の家庭教師兼ボディガード。何かあったら僕のこと呼び出してくれるから。あ、あと修行中の一般科目の授業もこの子が教えてくれると思うからよろしく〜。」
「げっ、修行中でも勉強すんのかよ…」
「健全な高校生だからね〜。復帰したときついていけなくなったら困るでしょ?ってことだから針お願いね。僕のこと秒で呼べるの君しかいないし。」
……ほんっとうにこの男は…!!人任せなんだから。ちょっと私のこと都合よく扱いすぎじゃないかしら?宿儺の器の家庭教師なんて聞いてないし。まぁ、確かに何かあったときのために私を側に置いておこうと思う気持ちもわかるけど。
この虎杖くん?には罪はないし下手に断って上層部が絡んできたら厄介そうだから受け入れるしか選択肢がないって絶対わかっててやってるのもムカつくわ。あとで絶対高い焼肉奢らせよう。
「………………………………狗巻針よ。よろしく虎杖くん。」
先生からの断れない無茶振りに思わず大きなため息が漏れた。