第23章 生を授かりし一なるモノは九分の死を受ける
「………………。」
「………。」
領域を解除し、また伏黒くんの魂の呼出も解除した。意識を失った悠仁くんはまだ教室の床に横たわっている。
……なんとか、生き延びた。
宿儺の声がした瞬間に"死"を感じた。両面宿儺という存在自体が傍若無人そのものであり殺戮なんだと、思い知った気がする。
同じ最強でも、悟がああならなくて本当によかった…。
気を緩めた途端、右脚の激痛が思い出すかのように滲み始める。…今はしゃがんでるからいいけど立ち上がれるかな、これ。
ドクドクと血が止まることはなく、あっという間にこの穏やかな教室の床は血に濡れた。
…応急処置しないと。
止血と脚を固定して、松葉杖で硝子さんのいる治療室へと向かう。
医療用のベッドが用意された部屋に悠仁くんを呼び出して、彼をそのベッドに寝かせた。私は椅子に腰掛けて、もう一方の椅子に痛んだ足乗せる。
私に反転術式をかけると、硝子さんはチラリと包帯が巻かれた私の脚を見て、煙草の煙を蒸せながら
「あんた、何してんの。」
と言った。
怒りとも悲しみとも取れる声。きっと色んな人に説明しないといけないことを私は全部すっ飛ばして勝手な行動をしている。
それでも、
「……。すみません、今は話せそうにないです。」
今は言えない。…いや、言いたくない。私自身気持ちの整理が追いついていないから。
早く誰かを頼ればよかったのに、誰かに裏切られるかもしれないって勝手に疑心暗鬼になって。
結果、この子が宿儺に人質に取られるような羽目になってしまった。…ほんと、ダメな母親。
こういうときに、悟がいたらって…思う。
色んな思惑が飛び交う中で、陰謀もなにも関係なく正真正銘私とこの子の味方をしてくれるのは、きっと悟だから。
「…でも、この気持ちはきっと明日には消えてるはずなので。必ず説明します。」
……夏油さんの魂を呼び出していることも。
悟はたくさんの時間を共有してきたし、感情を表に出すことも多かったから夏油さんに対する想いとかもある程度は汲み取れたから、"今の"夏油さんについてどう話すのかは決めている。ただ……。