第23章 生を授かりし一なるモノは九分の死を受ける
「……ふぅ。」
疲労から思わず溜息が漏れる。額に汗が滲んで、自分の限界が近づいていることがわかる。
………そろそろ呪力の限界か。
術式を解いて伏黒くんを元の体に……。と、領域を解こうとしたその瞬間、まるでタイミングを測ったかのようにその恐怖は、私の中で低く唸ったのだった。
"待て"
「…………っ!!!?!!?!?」
その声に、本能で思わず身の毛がよだつ。
初めて聞くはずの声に、私の体は恐怖に染め上がった。呼吸と共に手足が勝手に震える。
バクバクと心臓が一気に早まり、足早に脈打つ心臓に合わせて呼吸も乱れた。
「ふん、小僧を引き戻そうとしたか。」
恐れていたことが、起きてしまった。
………宿儺、ね。
緊張で喉が渇いてゴクリと息を飲む。どうしよう、どうする。今の宿儺はどこまで何ができる。
……落ち着いて、伏黒くんを通じて私の魂に干渉しているからきっとそこまでは…。
「貴様の精神世界であれば俺様が手を下さないとでも思ったか。凡な術師が、小賢しい。」
「っ!!?!?!?」
考えが読み取られている…っ!?ということは宿儺の魂は今私の身体の中にあるということ…?
「まあ、少し違うが…。貴様にはその説明で十分だろう。説明したところで現状は変わらん。」
ただ震えることしかできない私に宿儺は言葉を続けた。
「………貴様の身体を奪い取り自害にて殺してやってもいいが……。貴様が腹の中に抱えている"それ"は、実に興味深い。」
"それ"って……。まさか悟との…、
「ほう、五条悟との子か。」
「…………………何かしたら、許さない。」
何もないただ真っ白な部屋で、震えながらやっとのこと搾り出した私の声が領域に響く。
そんな私を、宿儺は一蹴するかのように鼻で笑った。
「弱者がこの俺様に逆らうか。弱者は弱者らしく平伏すればいいものを、なぜ逆らう?」
「……。」