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呪術廻戦_名前を呼ぶただそれだけで。

第23章 生を授かりし一なるモノは九分の死を受ける




「……どうですか?呼出の最中に私の魂や体に関与はできそうでしたか?」

私はしばらく休憩したのち、夏油さんを黒狐に呼び戻した。私の言葉に夏油さんは特に顔色を変えることはなく淡々と述べた。

「…………今の所できる余地はなかったね。予想通り、お腹の中の子の能力が働いているおかげで線ではなく点で術式が動いてるからだと思う。」

「…………お腹の子?」

夏油さんの言葉に反応を示す悠仁くん。

そういえばまだ狗巻家と猪野と七海さん以外誰もこのことを知らないっけ…。一応機密情報扱いになるのかしら、作戦会議が佳境に入ったら誰に伝えるべきかも考えないと。


「悠仁くんには言ってなかったわね、ごめん。あとできちんとみんなと一緒に話すから少し待っててほしい。」

「わかった。…じゃ、俺行くよ。伏黒に何言うか考えないと。」

悠仁くんは冗談っぽくそう笑って階段を登っていった。私の言葉を聞いてきっと自分が聞くべきではない会話だって思ったのかしら、しかもこっちに気を遣わせないような言葉を言って去るなんて。

「よく気が回る子だね。」

と、そんな悠仁くんを見て黒狐は物腰柔らかい声で呟いた。

「本当に出会った頃から…彼は優しい子です。常に自分に試練を課してる。」

「はは、随分と生きづらそうだ。」

あの修行の地下室で勉強していた日々で、悠仁くんは合間合間で「正しく死ぬ」とよく言っていた。

彼はいつか自分が死ぬ未来を思って、正しく在ろうとした。

死刑執行猶予が与えられた彼に残された時間はどれくらいあって、何を残せるのか。
きっと、悠仁くん自身も考えていたんだと思う。生きること、命の在り方について。

伏黒くんを説得できるかどうか、不安になっていたのはきっと……。

______。


「本当に…。悠仁くんは、なんだか生きる理由よりも死ぬ意味を探してるみたいだった。」

「………"だった"、ね。」


______伏黒くんにとって自分の存在が生きる理由になるかどうか。



「…私も人を見る目がないので全部はわかってませんよ。」

「ああ…、間違いない。夫に悟を選ぶ時点で見る目はないね。」



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