第23章 生を授かりし一なるモノは九分の死を受ける
「さて、話を戻そうか。」
悠仁くんの未来に想いを馳せる私の意識を夏油さんは現在に戻すかのように、テーブルからソファへと飛び移った。
「私が関与する間がなかったとしても、宿儺は違うかもしれない。器にされている彼の魂を呼び出すリスクが全くないとは言えないよ。」
「……はい、わかってます。」
呪いの王の規格は、人間には計り知れない。
私たち人間にできないことを当たり前のようにやって退けるから…。危険は承知の上だ。
「それでも、私にしかできないことですから。」
「…わかった、なら私もできる範囲の協力は全てさせてもらうさ。」
悟の封印を解いて、宿儺を倒して伏黒くんも救う。これ以上は誰も死なせない。
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呪力の限界もあるため、私は呼出を解除してようやくこの地下室で一人きりとなった。
慌ただしい日々に思わず気にする余裕もなかった、胸焼けと喉がつっかえるような吐き気。
「ごめんね、巻き添えにして。」
お腹を優しく撫でて、語りかける。
度々繰り返される身がのたうち回るような腹痛はきっとこの子の呪術が関係しているのだろう。
お腹の中にいる頃から自分の身を自分で守るなんて。
この子を守ることができない自分の不甲斐なさと生まれる前から優秀な我が子の未来を案ずると胸が痛む。
「……あともう少しだけ、」
この子も入れて、"全員"。
全て終わりますように。
「さて、行きましょうか。」