第23章 生を授かりし一なるモノは九分の死を受ける
今度は悠仁くんの体の中にある魂を黒狐の中へ。まるで手芸糸を網戸の穴に通すような作業。何枚も何枚もその網戸を潜り抜けて悠仁くんの魂を見つけ出して、私の魂の一部を彼の魂と結びつけて一気に手繰り寄せる。
あまりにも繊細な作業に思わず手のひらに冷や汗が滲む。
「………"呼出"、虎杖悠仁。」
ぎゅっと滲み出た手のひらの汗を握りつぶすように拳を握り、悠仁くんの名前を呼んだ。
お願い、成功して…!!
と半分神頼みで目を瞑る。
「うわ、視線ひっく!?」
そして、悠仁くんの声が聞こえた。
悠仁くんはどうやら無事呼び出されたようで、四足歩行になり低くなった自分の視線に驚いていた。テーブルの上で立ち上がる彼を見て、ほっと一息ついた。
…あとは、この一連のやり取りの中で私の術式に関与できるか夏油さんに聞く必要があるかな。
もし関与できるのであれば、宿儺も関与して私を攻撃する可能性が高い。そのリスクはなるべく避けないといけない。
「……っと、」
くらり、と眩暈がした。
案の定呪力を使いすぎたみたい。
「針さん!!大丈夫?」
蹌踉めいた私に慌てて駆け寄る悠仁くん。その小さな体ではもちろん私の体重を支えることができるわけもなく、ソファの隣で腰掛けている私の太ももに心配そうに前足を置いていた。
そんな彼の前足を力尽きた手のひらを重ねて
「……ごめん、呪力切れ。」
と、声を絞り出した。
今度はまた別の冷や汗が吹き出す。呼吸も乱れて揺らぐ意識に危険を感じた。
…意識が途切れる前に、さっさと術式解除しちゃいましょうか。