第23章 生を授かりし一なるモノは九分の死を受ける
念には念を押して、私は領域を開く。
ただのテレビとソファが置かれていた部屋が一変して、壁も床も見渡す限り全てが白く染まった。
「ここが、針さんの領域…。」
領域の中でも異質である空間をキョロキョロと見渡す悠仁くん。…何か答えてあげたいところだけど、生憎この空間では私は無駄に口数を増やすことができない。
申し訳ないと思いながらも、スゥ…っと息を深く吸って吐き出した。
「"呼出"、夏油傑。」
「……う"っ…!!!!」
そして目を見開き蹲る悠仁くん。息が乱れ胸を、頭を抑える。…ごめんなさい、辛い思いをさせてしまって…。
私は領域を解き、ただ悠仁くんの息が整うまで待った。
何分経過しただろう。
悠仁くんの息はとっくに整ったけれど、彼はソファに腰をつけて、目を閉じたまま動かない。
少し俯いているってことは、意識は別のところにあるみたいね…。早く目を覚ましてくれたらいいんだけど…。
チクタクと秒針が進む音と、穏やかな悠仁くんの呼吸だけが部屋に響く。
静かな部屋に響く彼の呼吸につられて、私は自分の呼吸も意識的にしてしまう。
…お願い、目を覚まして………。
「…………っはぁ。」
緊張で口が乾いてきた頃、藻がくように息を吐く音が聞こえた。
悠仁くんか、夏油さんか。
息を吐いたのはどちらなのか。ドキドキと私は彼が話し出すのを待つ。