第22章 烏は陽から兎は月から怱怱と逃げ出すほどの
わかってはいたけれど……やっぱりそうか。
相手は呪いの王だものね。
私は返す言葉もなく、夏油さんが続ける言葉に耳を傾ける。
「魂の繋がりがある以上は、体の持ち主の魂を経由して君に接触をしてくるはずだ。…そうなると……あとは言わなくてもわかるかい?」
「………はい。」
宿儺を呼び出すのは初めから拒否が想定されるから、伏黒くんの魂を呼び出せればと思ったんだけれど。どうやら無理そうね。
悟を獄門疆から出す方法は"天使"がいるから解決したとして、あとは伏黒くんの救出と死滅回遊を終わらせることになったんだけど、宿儺と羂索……相手が凶悪すぎる。
一旦は"詰み"か、と伸びをしようとしたその時、夏油さんが小さく言葉を漏らした。
「……ただ、私も一つ気になることがあってね。」
夏油さんはソファから降りて、とことことテレビ台の上に飛び乗った。
そして、
「針、私を呼び出してみてくれないか。」
と言った。言われるがままに夏油傑、と彼の名前を呼ぶ。特に何の異変が起きるわけもなく夏油さんは私の膝の上に現れた。
「……やっぱりか。」
と夏油さんは言うけれど、特に何の変化も感じられなかった私は訳もわからず首を傾げた。
君は気づいていないかもしれないけど…と夏油さんは言葉を続ける。
「私の記憶と違うんだよ、君のその"呼出"の術式がね。」