第22章 烏は陽から兎は月から怱怱と逃げ出すほどの
「…………ん、あれ…。」
なんだか、随分と久しぶりに長い間眠っていた気がする…。
数時間は寝ていたはずだけれど、地下にあるためちっとも部屋の様子は変わっていない。
ただテレビ台の上に置いてある時計だけがチッチッと秒針を前へと動かしていた。時計を見ると、短針は3の文字を指している。
悠仁くんたちと合流したのが昼間だから、きっと日付が変わって11月17日の夜中なんでしょうね。
「……呪力、戻ったかな。」
寝起きでまだぼんやりとする頭を起こすために、硝子さんからもらった水をゴクゴクと飲んだ。
「…呼出…"夏油傑"。」
この名前も短期間で随分呼び慣れた気がする。夏油傑もまた呼び出されることに慣れた様子で、
「話の続きをしようか。」
と、言った。
「……私は抱きしめられたままでいいのかな?」
そう、私の腕の中で。
「いやっ、!!!!違うんです!!!ほんとに!!!!!!」
悟と付き合ってから誰かと寝るほうが落ち着くようになっちゃったから、つい人形を抱きしめながら寝ちゃったのよね!!!!!!
私はソファの上で伸ばしていた脚を床に下ろして、空いたスペースに慌てて夏油さんを置き直した。
あはは、と夏油さんは乾いた笑いをもらして、しばらく間を置いてからすー…と息を吸った。それからゆっくりと吐き出すように
「危険だ。」
と言った。