第21章 山のうえには常に蛇がひそみ勢いづいている
夏油が本物だと知った私は今後について考えなければならない。
今、いつ悠仁くんたちは悟の封印を解くために動いている。その後はおそらく羂索を探し出して、死滅回遊を終わらせるために動くでしょう。
…どうすれば死滅回遊を終わらせることができるのか。総則にゲームを終わらせるようなものは追加できないでしょうし。
______毒の創造主は解毒剤を創り上げてから実用化する……。
羂索もまた同じように死滅回遊を終わらせる方法を用意してから実行していると思うのだけれど…。
「……わからないことだらけね。」
ふぅ……と、思わず深いため息が零れ落ちる。特に何をするわけでもなく静かに包まっていた夏油傑は
「お手上げかな?」
と、そんな私に声をかけた。
「………残念ながら。そもそも死滅回遊というものの本質もわからない、羂索の目的が本当に人類の一体化なのかも…。
…彼が自らが乗っ取った相手の体の記憶や知識を共有できるってことは逆に夏油傑が元の体に戻った時、羂索の意識や思考も共有できるんじゃないかって考えているんですけど…。」
「…………ふむ、興味深いね。ただ、それだと私以外の魂でも良さそうだけど。他じゃダメだったのかな?」
「………言われてみれば…。ただ、この"魂の呼出"については私自身の能力以外の部分が作用していて、曖昧な部分が多くて…。今まで深く考えていなかったけれど、魂が呼び出せている今、体と魂は別物と考えるのが妥当で、持ち主以外の魂が入り込んだときのリスクが………______。」
そうか、わかった。
私は言葉を綴ることをやめる。ある考えがよぎったからだ。
……人間を呼び出したとき、当たり前だと思っていた。彼らが服を着ていることが。手に持っていたスマホが一緒に呼び出されることが。
呼び出された本人の所有物と見なされた物が一緒に呼び出されている…。魂と体が別物だとしたら…体は、魂の所有物なんだ…。
つまり、夏油傑の魂が現在羂索に乗っ取られている体を自らの所有物と見做せば……羂索から体を取り返すことは可能だ。