第21章 山のうえには常に蛇がひそみ勢いづいている
「えっ、あ……。はい。」
核心を突くところは悟そっくり…。
なぜ百鬼夜行をしたのか、今はどう考えているのか…。いろいろ聞きたいことはあるけど……。きっと野暮ってやつね。
私は今現在1番気になっている疑問を彼にぶつけることにした。
「……あなたが、私が作り出した都合のいい偽物の魂だったらどうしようって。」
「あぁ、なんだそんなことか。それなら、簡単に解決できる。」
「…悟の無下限呪術はね、昔は攻撃を取捨選択せず無条件で全て弾いていたんだよ。これは君の知り得ない情報じゃないかな。今の私が、都合よく君が生み出した存在なら私がこれを知っているはずはない。」
「…知らなかった、」
そうだったんだ…。確かにこれは私の知らない情報だ…。今いる夏油が私の作り出した存在とすれば私の知らない情報までも生み出すことはできない……。
「じゃあ、やっぱりあなたは本物の"夏油傑"なんですね。」
「正真正銘のね。」
私が呼んだ彼の名前が、呪力に変換されて術式が溶けていくのがわかる。今彼は私の隣にいるから…。この感覚は間違いなく彼がここに存在している証だ。残念ながら虚に呪力を留められるほど私は優れていない。