第21章 山のうえには常に蛇がひそみ勢いづいている
起き上がった夏油は、トコトコと四足歩行で部屋の中を歩き回りながらキョロキョロと見渡した。
「芝生の次はどこかの応接間か…。」
「ホテルの部屋よ。最上階のね。」
「ふーん。」
夏油はあまり興味なさそうに返事をすると、ソファの上に飛び乗って、私の隣に体を据えるとこちらをジロッと見つめた。
「…うわっ!?!!?!?」
…かと思えば突然また体を跳ねさせて、今度は私の頭の上に乗る。ビクついた私を特に気にかけることもなく飄々と夏油は口を開く。
「さっき、君は突然私のことを強制送還したわけだけど。何か言いたいことはあるかい?」
そう言いながら前足で私の額をペシペシと交互に叩く夏油。少しだけ生えた爪が当たってチクチクする…。心なしか口調は少し怒っているように感じる…。
そういえば、公園を出る前に呪力が限界になったから慌てて術式解いたんだっけ…。
「……しょうがないじゃない、呪力消費激しいんだから長時間呼び出しておけないの!」
「なにか一言声をかけるべきだったよね、勝手に呼び出しておいて、突然消すなんて酷いな。」
「…それは、まぁ…そうだけど、」
初めてまともに会話したけど、こんな人なのね…。悟と仲良いって聞いていたからこんな正論ばかり言う人だと思っていなかった…。
「…………悪かったわよ。次からは気をつける。」
分かればいいんだよ、と夏油は私を叩いていた手を止めてまたソファへと降りて、体を丸めた。
はぁ、叱られるのなんて高校一年生のときに悟に学校へ行くよう促されたときぶりだわ…。
……………この人が、もし先生になっていたら今も何か変わっていたのかな。
羽を休める夏油をジッと見つめていると、その視線に気がついたのか、夏油はこちらへ振り向く。
「何か私に聞きたいことがあるんだろう。」