第3章 星はひかれど燎火をもとめる原いん
「針、二手に分かれよう。たぶんポルターガイスト的な能力だから針とは相性はいいと思う。見つけたら僕を呼出してくれればいいから。」
「……わかった。」
唐突に現れた呪いのせいで空気感に先程の余韻はなく、私たちは別行動を取った。ただ、私の心臓だけはまだ波打っていた。自分と反対方向に進む先生の背中を振り返る。
恋人の"フリ"………なのかな。
先生はあの眼差しを他の人にも向けるのだろうか。あの言葉も全て任務のための作り物なのかもしれない、私だけではないのかもしれない。…胸が痛む。傷んだ胸から溢れ出す熱い何かが込み上がってなんだか泣きそうになった。
「こんなの…。」
…まるで私が先生のこと好きみたいじゃない。
先生に触れられた温度を確かめるように私は自分の頬を手のひらでなぞる。温かい。温かいのは先生の温度か、それとも自分の涙か。
「……好きっ…。」
私は先生のことが好きだ。…でも先生は私のことを好きじゃないのかもしれない。それが苦しくて私は立ち止まってしまった。
"……あナタ、泣イてル?どうシて?"
「っ!!」
慌てて振り返ると、そこには先程攻撃してきた呪いが立っていた。急いで距離を取り、身構えるも呪いは佇んでいるだけで何かをする気配が一切しなかった。
"……………来テ…"
困惑してしばらく眺めていると、呪いはフラフラと奥へと私を誘おうとした。様子がおかしい。あんなにも攻撃的だったはずなのに今度は話しかけて友好的になったとも思える。
どちらにせよ祓うのならついて行く必要がある。私は呪いに言われるがまま彼女の後を追いかけることにした。