第3章 星はひかれど燎火をもとめる原いん
「…生徒として、でしょ?」
「さあ?どっちだろう。でも僕は針を独り占めしたい。これが生徒への気持ちとは僕は思わないな。」
2人の間に沈黙が走る。今日はずっとこんな時間が続いているような気がする。目隠し越しで目が見えずにはっきりとした意図が読み取れない。私は気がつけば先生の目を覆う黒い布へと手を伸ばしていた。心臓の鼓動が肩へ、腕へそして手首、指先へと伝わって先生の顔へと触れた。
青く透き通った瞳が、私のことを真っ直ぐと見つめていた。
「あ…。」
私の頬に触れていた先生の手が動く。輪郭をなぞって、口元へ。先生の鼓動もまた指先から伝わっているように感じた。キス、される。きゅっと目を瞑って先生の唇が触れるのを待った。
……その時。
私たちがいる廊下の窓が一斉に割れた。ガラスは激しく吹き飛びこちらへ向かって飛んできた。
「針!!!!!!」
咄嗟に先生が私に覆い被ってガラスの破片を防ぐ。先生への被害を心配したが、彼の能力のおかげで彼の背中は無傷のようだった。パラパラと落ちていくガラスの音に紛れて女性の声が混じった。
「どうシて…わタシ………も…………」
声がする方へ慌てて振り返ると廊下の奥には髪の長い女性が立っていた。女性は上品なワンピースを身に纏っていることから、今回のターゲットであるとわかる。…この屋敷に住んでいた令嬢だ。
「わタシ、モ……………私も!!!!!!」
床に落ちたガラスが舞い上がり、一斉にこちらに向かって飛んでくる。しかしそれも全てまた同じように五条先生によって防がれる。通常ならあり得ない出来事に狼狽たのか、彼女はさらに奥へと逃げ出してしまう。