第21章 山のうえには常に蛇がひそみ勢いづいている
「それにしても…、私の身体がそんな風に使われているなんてね。」
現状を一通り話し終えると、夏油はすんなり話を理解してくれた。あとは何故彼を呼び出したのか説明をしなくてはならない。
私はすーっと息を吸い込んで、ふぅ…と吐き出す。しばらく間を空けても夏油は静かに私が口を開くのを待ってくれていた。
「…元の体にあなたの魂を呼び出すから、羂索の魂を追い出すなり下に沈めてもらいたいんだけど……、」
私がそう言うと先ほどまでどこか俯瞰的だった彼は、上下させていた尻尾の動きをピタリと止めた。
「なるほど…。」
夏油はしばらく考え込むと。わかった、と言って立ち上がり、地面を蹴ってピョンと跳んで私の頭の上に乗っかった。…生暖かい体温が頭のてっぺんから伝わる。…少しだけ重い。5kgのお米って感じ。
上に乗った体重に少し首が傾くも、夏油はそんなこと気にもせず私の頭の上で口を開く。
「……元は私の体だ。借りたものはきちんと返してもらわないとね。ほら、早く行くよ。」
「え、どこに………。」
「乙骨憂太…。私の知る限り悟がいない今、彼が作戦の要なんだろう。ほら、彼の元へ行くよ。」