第3章 星はひかれど燎火をもとめる原いん
正直言ってこれが恋心なのかはよくわからない。6年前のあの日から僕を呼び出す彼女をいつの間にか僕の方が呼ぶようになっていた。
所有物。
そんな感覚だった、ペットを飼ったようなそんな気持ち。
針は僕を呼び出す時はいつも嫌そうな顔をする。初めのうちは僕が単に嫌われているのだと思った。しかし呼び出したあとの彼女の呟きからそうではないとわかった。
針は僕が嫌いなのではなくて、僕を呼び出す自分が嫌いだった。
彼女は僕が気づいていることに気づいていない。僕を呼び出した後に僕よりも先に帰りたがる日は悔しさの涙を我慢していることを。
そこから少しだけ彼女のことが愛しくなった。
しかし、彼女は1級呪術師になると1人でも十分に戦えるほど強くなった。
つまり僕はお役御免になってしまったわけだ。
そこから芽生えた支配欲。
彼女に頼りにされないことがつまらなく感じた。彼女から呼び出されないのなら僕から呼び出してやろうと、彼女に電話をかけて呼び出してもらうようにした。
子供っぽい独占欲。
けれどそこまでしても彼女を自分のものに、再び自分の手に収まるものにしたかったんだ。君を傷つけてしまっても。
ごめんね、針。
僕は大人気ない大人だから、この気持ちを隠したまま君に手を差し伸べるよ。