第20章 言葉はただそこに坐り臥すと少女は言う
「言質、取ったわよ。」
その言葉と共に、領域を解いた。術式反転の乱発、領域展開。もう呪力が底をつきそう…。ふぅ、と息を吐いてパンダの回収に向かおうとしたそのとき。
ゴォンッ
とコンテナを踏み潰す音が聞こえた。
「秤くん!?」
突如現れた秤くんは呪力を溢れさせながら戦闘体制に入っている。彼を中心に鳴り響く音楽…これは、"当たってる"わね。
「平和条約は、結んでねぇもんな。」
「ちょっと…!?」
そんな秤くんを見て、鹿紫雲は嬉しそうに笑いそして身構えた。
もう戦う必要はないのに…!!
瞬く間に殴り合いを始めてしまう2人。肉体派2人を止める術を私が持っているわけもなく、2人が殴り合う光景を見守る。
「オマエ、名前は?」
「秤金次。金ちゃんって呼んでもいいぜ。」
どっちか呼び出して事情説明しないと!!
秤くんは……今はたぶん呼び出しても自動的に拒否されそうね、
「"呼出"、鹿紫雲一!!」
「おっ、」
「何してるのよ!!」
殴り殴られ吹き飛び、コンテナが荒れ切った場所で私は叫んだ。
「邪魔すんな、強い奴がいたら戦う。それ以外に理由はねぇ。」
いかにもだるそうにしている鹿紫雲がはぁぁ…と盛大に溜息をつくとボコボコになって倒れたコンテナの裏から今度は秤くんが現れる。
「そういうこった、邪魔すんな狗巻姉。」
「……あぁ、もう!!死ぬかもしれないのよ!?」
「命を賭けた戦い上等。ゾクゾクするね。」
「馬鹿じゃないの!?」
ほんっっとうに、馬鹿。2人ともなんで嬉しそうなのよ。
…ああ、わかった鹿紫雲一が宿儺に固執する理由。恨みでもなんでもないわねこれ。
ただの戦闘狂だわ。力を持った馬鹿2人。