第20章 言葉はただそこに坐り臥すと少女は言う
久々の命をかけた本気の一対一。
鼻から垂れる血を拭い取ると、命をかけた久々の戦いに戦慄し、手のひらに滲んだ冷や汗と混ざり合った。
…催涙雨は電気を通すから迂闊に使えない。霧雨……も、威力が足りない。やっぱり我幻悉糜でルール改変の言質を取るしかなさそうね。
まずは、お喋りする環境を整えないと。
「まさかこれで終わりじゃないだろ?」
「"呼出"、霧雨!!」
目の前に現れた霧雨を手に取り、鹿紫雲に向けて投げつける。それはあまりにも単純な攻撃で鹿紫雲もあっさり避け交わした。
「どこ狙ってんだ!!!」
「っ!!!」
そして、霧雨を避けると共に足を踏み出しこちらに攻撃を仕掛ける。一定の距離を保ちながら戦っているので攻撃はある程度避けられる。
距離を詰められたら術式反転でまた距離を取り直し、霧雨を打ち込んだ。当たり前かのように霧雨を避け続ける鹿紫雲。
「つまんねぇ。
………終わりだ。」
鹿紫雲が自らに溜まった電極を弾き出した。…痺れを切らしたか。電気のような呪力と聞いた時点で微弱でも引き寄せようと思えば引き寄せられると思ってたけど。
構える鹿紫雲に思わず身を後ろに引いてしまう。
…こちらも"仕込み"は終わった。
打ち込んだ霧雨。ただ無闇に投げたわけじゃない。地面に刺さった霧雨同士を結ぶと円のようになっている。
この空間に壁があることをイメージする。
まさか実戦で初めて使うのがこんな強敵だなんて。…いや、強敵にこそ相応しいのかもしれない。
「"鹿紫雲一"。お喋りは嫌い?」
呪力を練る鹿紫雲を今度は通常通り呼び出した。予想外の出来事に鹿紫雲は目を見開く。
私は両手の小指を伸ばして、口の前に運びばつ印を作った。これが私の掌印。
「"領域展開"、言言坐臥。」