第20章 言葉はただそこに坐り臥すと少女は言う
「生憎だけど、存じ上げないわ。」
「ならとっとと死ね。」
彼の問いにそう答えると、2人とも戦闘体制に入る。こちらに距離を詰めてくるのに対して、パンダを抱える私は防戦一方となり攻撃を避けることしかできない。
「…っ…!!」
だめだ、彼の攻撃を避け続けてもこっちの体力と集中力が先に切れる。
…彼の名前が必要ね。
「コガネ、彼の名前わかるかしら。」
「鹿紫雲一、デス!!!」
「…!!!」
結界に入る前、死滅回遊締結に向けて立てた作戦の要となる100点プレイヤーだ。彼にはルールを追加してもらう必要がある。
…我幻悉糜を使うか。
「あなた……」
「あ?お喋りとは余裕じゃねぇっ!!かぁ!!!」
「…っ!?」
会話は失敗。それどころか、右腕を負傷してしまった。
…こいつ、パンダに残っていた電極を使って…!!
しかし、鹿紫雲一はそれだけでは終わらない。
「俺の狙いは、初めからテメェだ!!!」
…!!しまった、距離が詰められて…!!!
避けられない!!!
「…ぐっ…っ…!!!!!」
パンダに帯電していた電極を使って私と距離を縮めた鹿紫雲は攻撃を仕掛ける。
避けられないと察したその瞬間にお腹を守るために足を後ろに引き、顔が前に出たことで、鹿紫雲の拳が私の顔にのめり込む。
それから彼が脚を蹴り上げまた顔に喰らいそうなところでハッと力を入れ直し、即座に腕を出してガードした。
「…"術式反転"鹿紫雲一"!!!!」
一瞬の隙を縫って鹿紫雲と距離を置く。
「"呼出"、パンダ。
………悪いけどちょっと離れたところに置かせてもらうわよ。」
鹿紫雲の足元に転がっていたパンダを触れずに回収し、そしてまたそのパンダからも距離を置いた。
瞬く間に私と数メートル離れた鹿紫雲は目を見開きにやりと笑う。
「おもしれぇの持ってんじゃねぇか。」
「おあいこでしょ。」
…さっきの攻撃、物理的にガードはできたけどおそらく電極は帯電されている。どの程度で引き寄せられるのかわからないけど…。
仕掛けてこないということはまだあと何発か向こうはこっちに叩き込む必要がありそうね。
それでも、帯電したら1発アウト。…パンダは頭だけでも何故か生きてるけど…。
私は、喰らったら確実に死ぬ。