第20章 言葉はただそこに坐り臥すと少女は言う
「ちょ、うそ!?」
突如上空に移動させられ、落下する私。左右を確認すると、離れたところにある高層ビルの上層階と同じ高さにいた。このまま落ちたら体が文字通りバラバラになる。
自分が落下するであろう真下を確認すると、港のコンテナ置き場が見えた。ビルのような高い建物はない。
…なんとか着地しないと!!
「"呼出"!!催涙雨!!!!!……と高跳び用のマット!!」
コンテナクレーンの横行部分に催涙雨をひっかけてぶら下がる。そして、催涙雨から手を離し、呼び出しておいたマットの上に着地した。
「"催涙雨"。」
クレーンに絡みついた催涙雨を手元に戻すためにもう一度呼び戻す。
…危なかった。
ふぅ、と一息つくも息を吐き切る前に数メートル先からバチバチと電撃が響く音が聞こえた。…誰かが戦闘している。様子を見るべきか。………いや、逃げるべきね。
悠仁くんたちが19日までに死滅回遊締結に向けて動いているのなら、それまで生き残ればいい。
ポイント変動の総則が追加されなければその時は誰かを殺す必要があるけどね。少なくとも今は、必要以上の戦闘は避けるべきね。
…音を聞くに、戦っているのはおそらく1対1。複数はない。今この東京第二結界内にいる高専関係者は秤くんとパンダだけのはず。
このどちらか2人以外の遊者なら放っておくのがベストだけど……。
しばらくしないうちにピタリと戦闘の音は止んだ。そして、静けさを取り戻した港。コンテナに取り囲まれた奥側から声が聞こえた。
「悪いな、パンダは口が固い。」
「…っなにしてんの!!"パンダ"!!!!!」