第20章 言葉はただそこに坐り臥すと少女は言う
「お。」
案外、すんなりとパンダを呼び出すことができた。これで泳者の結界出入り問題は解決できそうね。100点を消費してのルール追加はポイント譲渡を優先させてよさそう。
じゃあ頑張ってね。とパンダの背中をポンと叩いて、結界に入るのを見送る。
ひとまず呼出が成功したことにホっと胸を撫で下ろしたそのときだった。
「よぉ、俺はコガネ!!この結界の中では死滅回遊って殺し合いのゲームが開催中だ!!一度足を踏み入れたらお前も泳者!!それでもオマエは結界に入るのかい!?」
コガネが現れた。慌てて周りを確認する。…しかし、辺りには誰もいない。つまりは、こいつは…。
「それ、私に聞いてるの?」
私は結界にもちろん、足を1ミリたりとも踏み入れてはいない。なぜ…。予想だにしていなかった展開だ。
結界の外から内側を呼び出すことは可能だったけれど、内側から外側を呼び出すことはできるのか…。
桜島と仙台にいる乙骨くんと真希ちゃんを呼び戻す作戦に支障が…。
いや、そんなことよりも身重の状態で殺し合いに参加?馬鹿げてる。
「そんなことするわけ………、」
「狗巻針が死滅回遊へ参加しました。総則を参照しますか?」
「うそ…。」
しかしコガネは私の言葉を聞くまでもなく参加を決めてしまう。理由が、わからない。
なぜ、とぐるぐる私の中で色んな考えが巡る。
結界に近づいた時点で遊者認定されるものだったのか。
自分が気が付かないだけで、所謂覚醒者という既存の遊者なのか。…だとしたら私の意識は既に羂索が何百年も前に契約した過去の術師に体を意識を乗っ取られているはず…。
数秒考え込む私にさらに追い討ちがかかった。
「えっ。」
瞬間の出来事。感じたのは重力と冷たい風。
青空が近い。ビルの屋上が過ぎ去っていく景色が見える。
私は今、はるか上空から落下している。