第20章 言葉はただそこに坐り臥すと少女は言う
______11月12日。
死滅回遊に参加するべく私たちは結界の前に立った。
「秤くん、久しぶり。」
「あぁ?あー久しぶりだな優等生パイセン。」
悠仁くんたちの説得により、死滅回遊を締結させるための作戦参加に踏み切った呪術高専3年生の秤くん。
不真面目で中学ですら留年してしまった彼と私と対極であり、仲は当然良くはない。めっちゃ悪いわけでもないんだけど。
そんな秤くんは私とパンダと3人の共闘チームだと思っていて、あからさまに嫌そうな顔をする。
…そう、性格の相性は間違いなく悪いからひどくなる前にお互い適度な距離を図っていただけなんだよね。東堂くんと違って、秤くんは誰かと共闘とかするような術式でもないし…。
ただ、ひとつだけあるのよね。私が彼と共闘できる方法。
とーーーっても嫌なんだけど。
「あれしてくれよ。言質取って縛り作るやつ。」
「生憎だけど、私は結界に入らないから。」
「なんだ参加しねぇのかよ。相変わらず"熱"がねぇな。」
「はいはい、すみませんね。」
私の拡張術式我幻悉糜(がげんしつび)は、言質を取ると言質を取るために最善の状態が生み出される。つまりパチンコをモチーフにした秤くんに「勝て」と言質を取ると……。まぁそういうこと。
確定で当たるわけではないけれど、気持ち程度には上昇するのよね。秤くんの術式が強力な分当たったときにごっそり私の呪力が持っていかれるのが問題ね。秤くんはそのことあんまりわかってないみたいだけど言質を取って得られる効果が大きいほど当たり前に呪力消費も激しい。
私は秤くんをテキトーに遇らい、結界と向かい合った。…10月31日に帷に入って行く悟を見送ったときのことが少しだけ過ぎった。
「無事で帰ってきてね。」
ただの言葉で、2人を見送る。
「よぉ、俺はコガネ!!この結界の中では死滅回遊って殺し合いのゲームが開催中だ!!一度足を踏み入れたらお前も泳者!!それでもオマエは結界に入るのかい!?」
「あぁ。」
とパンダと秤くんが答える。そして、彼らは結界の中に飲み込まれて消えて行った。
もちろん返事をしなかった私は外で居残り。では何故そんなわたしがここに来たのか。
答えはシンプル。
「"呼出"、呪骸パンダ。」
私の術式を用いて、結界の出入りができるかどうかの確認だ。