第19章 春に風をふかせしそらは、秋に雨をもたらす
「はぁーーーーーーー!!?!!!?!?!?!?」
その場にいた3人、全員が絶叫。
こんぶこんぶと慌てる棘と、びっくりしてから考え込むパンダ。一番声を荒げたのはお母さんだった。
「ちょっと!!なんでもっと早く言わないの!!…妊婦のくせして任務なんて行ったの!?傷たくさん作ってお腹の子になんかあったら………というかお相手は誰なの!?」
と、あまりの質問攻めに気圧されてしまう。
えっと…と私がバツの悪い顔をしていると、パンダとコソコソ話をしていた棘がお母さんに近づいて、こちらにも聞こえる声で耳打ちしていた。
「明太子。」
と。
「は!?五条先生って…五条ってあの五条家の!?五条家くらいお母さんだって知ってるわよ!!やだ、お母さん向こうのお家と上手くお付き合いできるかしら……。」
ここまで息継ぎなしで、饒舌になるお母さん。よっぽど慌てているんだろうなと私から見ても察することができるほどだった。
「針は男の見る目ないな〜。」
「こんぶ……。」
オロオロする母を見ながらパンダは茶を啜っている。棘はそんなパンダの発言に対してうんうんと深く頷いていた。
というかパンダ、私たち家族の事情今日1日で知りすぎじゃ…。
「……とにかく、お母さんは落ち着いて。棘も。」
今焦っても仕方ないというのに手の行き場がないといった感じで落ち着きがなくなってしまったお母さんと、複雑そうな顔をする棘をテキトーに宥めると、私はお母さんの手を引いて強制的に会話を終わらせて、台所へと向かった。
しかし台所に着くと、「悪阻も辛いんでしょう、座っときなさい」と客間へ再び帰されてしまったのだった。