第19章 春に風をふかせしそらは、秋に雨をもたらす
「………。」
「ツナマヨ。」
「わかってるわよ……。」
棘に首を振られた私がしばらく黙り込んでいると、すかさず「早く行けよ」と棘が急かすものだから私は渋々立ち上がった。そして、私と入れ替わるように襖が開いてパンダが入室する。
すれ違うパンダは特に何も言うことなく、立ち去る私を見守っていた。閉じた襖の向こう側から私の名前が聞こえたけれど聞こえないふりをした。
______先ほどの客間には母だけが残されていた。部屋に入った私を見て、母は優しく微笑む。
「…お茶、まだ温かいわよ。」
「………………いいよ。」
5年も会っていないのだからお互いに積もる話しかないのに、それでも何を話したらいいのかわからなくて、ぶっきらぼうに返事をしてしまう。
それでも母はずっと目を細めて私を優しく見つめた。
この視線は覚えがある。
私が確かに感じた、純粋に受け入れることができた、誰かからの愛情。
悟が、私を見つめるときの瞳にそっくりだった。