第18章 今之感情と昔之感情
中学生の私宛に届いた、男性の配達員の背すら超える、手に余るような代物。包装紙を破ると、札が貼られた巨大な木箱。それから筆と墨で綴られた手紙。差出人の名前には禪院直毘人と書かれていた。
"貴様のものだ、強くなって貴様の存在を証明しろ"
長たらしく綴れた文の最後にはそう書かれていて、この最後の一文だけが本文なのだと思った。
当然、そんな大剣を一般人として過ごしてきた私が持ち上げることもできるわけもなく、しばらく持て余すこととなった。
ただ…
「邪魔すぎる…。」
私の自室の半分ほどを埋め尽くすそれは邪魔で仕方なかった。痺れを切らした私は、禪院直毘人を訪ねることにした。…この大剣を返すために。
新幹線に乗り、京都へ向かう。夏の暑い日差しが私の首元に汗を伝わせた、夏休みのこと。
「……返したいものがあるんだけど。」
私は禪院の門戸を叩いた。