第18章 今之感情と昔之感情
声がした方を振り返ると、そこには金髪の男が立っていた。よく見ると髪の中が黒い。染めているのだろうか?目つきも悪いしなんだかあまり関わりたくないな…。
私が黙り込んでいると、彼は続けた。
「見たことない顔やなぁ?禪院の人間ちゃうんか?」
なんだ、家の人間のことは把握しているんだ。見た目に反して存外頭は悪くないらしい。
ただそれでも関わりたくないので私は無言を貫いた。
「あ?その口何のためについとんねん……ってあぁ、呪言師のガキがおるとか言うとったな。ほな喋られへんのか。」
それでも彼はそのお喋りな口を止めることはなかった。私を見下したように鼻で笑い、呆れたようにこう言った。
「自分の術式もまともに扱われへんなんて、とんだ間抜けな一族やなぁ。」
「は、」
…事実故に指摘されて腹が立った。棘が修行として連れていかれ、学校で意図せず術式を発動させたばかりの私には特に腹が立つ言葉だった。
こいつに何がわかるのだろうか。私たち姉弟の苦しみが。
ただどの家系に生まれたか、それだけの違いで…。許せない。
小学生の怒っている様子など、彼は気にもしなかったのだろう。言葉を続ける。…いや、そもそも私の存在すら気に留めていなかったのかもしれない。
「せっかく伝統ある呪言師の末裔やのに、それがまともに使えんドブネズミ。」
______ああ、もう我慢の限界だ。
すぅ…と息を吸った。
そしてゆっくり吐き出す。
「………。"ドブネズミ"も悪くないよ。"大量のドブネズミ"もね。」
「はぁ…?……って、うっわ!なんやねん!!生きてる!?!きっっっしょ!!!!!!」
「あっはは、だっさ。」