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呪術廻戦_名前を呼ぶただそれだけで。

第18章 今之感情と昔之感情





「……ぼいこっと。」

「そうだ、ボイコット。」


小学校から帰宅途中。突如現れた和装の男に声をかけられる。異様な出立と振る舞いですぐに呪術界の人間だと気づいた。

数日前、術式制御が効かなくなった棘が修行のために何処かへ連れて行かれた。しかし、本人が乗り気ではないらしく、棘と私を会わせて説得してほしいとのことだった。

当たり前に拒否権はなく連行される。…大人になった今改めて思えば誘拐に近い。……さすがは天下の禪院家様と言ったところだろうか。


______目的地にたどり着くと、我が家とは比べ物にならないくらいの巨大な敷地、聳え立つ平屋の由緒正しき建物。

中に入ると手入れされた中庭と縁側が続いてた。

その家の人々は皆、慌ただしそうに動き回っていたが、私とすれ違うたびに奇妙なものを見る視線を向けた。
騒がしい家だな。とこちらもまた不思議に思っていると、

「重大な任務が行われている関係で、少し慌ただしいが気にするな。」

と無愛想に案内していた大柄な男が、キョロキョロと視線をチラつかせる私を見てそう言った。

広い敷地、長い廊下を渡し歩き、棘がいる場所に到着した。
襖をあけると、てっきり落ち込んで塞ぎ込む棘がいるのかと想像していたが、そこには不貞腐れてそっぽを向いている棘がいた。

久しぶりに見た愛しい弟の姿に思わず笑みが止まらない。


「…!!と…………」

と、名前を言いかけたところで私は口を噤む。いけない、"呼んで"しまうところだった。

改めて落ち着いて、私は棘に歩み寄る。きしり、と畳を踏みしめる音がした。
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