第17章 愛にかわる苦しみと離別
上層部が潜むであろう拠点に少しだけ近づくと、彼らの会話の中に夜蛾先生の名前が聞こえた。
………会話の主は楽巖寺だった。
高専サイド……楽巖寺は何度も夜蛾先生に完全自立性呪骸の生成法を聞き出そうと試みているようだ。
話を聞くに、夜蛾先生とパンダは今高専に囚われている。囚われていること自体に何か意図があるのか……。
……。
「呼び出して、みようか。」
死刑が執行されてからでは遅い。どうかお節介にならないことだけを祈って。
私は物音を立てないよう、高専から離脱し自宅付近へと戻った。
自宅は高専に場所が割れているので万が一を考え少し離れた人目につかない公園と向かった。
「"呼出"夜蛾正道。」
「……!!!!…っ針か!!!」
特に外部からの強い妨害もなく夜蛾先生は夕陽に照らされた。いつもの全身黒の制服を纏っていた夜蛾先生は一瞬目を見開いたものの、私の姿を確認するとすぐに状況を理解したようだった。
「何か意図があって高専に捕まっていたならすみません。ただ、これが1番手っ取り早いと思って。」
「……いや、いいタイミングだった。簡単に状況を説明するから聞いてくれ。」