第16章 第16章 千の篇も一に律される
会話も通じない相手に我幻悉糜(がげんしつび)は使えない。つまり、今必要なのは単純な戦闘力。……苦手なのよね純粋な戦闘って。
本当に、嫌になる。
それでも1級術師なんだから。意地、見せないとね。
「"呼出"催涙雨、霧雨3本!!!」
私は現れたストールを掴み取りそのまま自分の肩にかけてから、現れた霧雨のナイフを3本全て片手で指の間に挟むようにして受け取る。
そしてそれを、私を囲む改造人間3体それぞれに1本ずつ撃ちつける。
少しよろめいた隙をついて、奴らの周りをぐるりと一周回りながら3体まとめてストールを巻きつけた。
催涙雨で呪力を吸い取りながら、霧雨を呼び出しては呪力を込めて打ち込み、そして微弱な呪力で床に対して術式反転を行い宙に舞い、向かいの改造人間へ霧雨を再び打ち込む。何度か打ち込んでいれば黒閃も打てるだろうし…なんて考え、繰り返そうとしたのだが…
「……脆すぎる。」
たったの数回で改造人間は倒れてしまった。そのくせして、あのパワー?変ね。
もしかしたら集まった魂を一気に大量消費することで爆発的な力を手に入れていた…。
つまりのところ自爆に近いものだったのね。
案外呆気なかったわね。……早く悠仁くんのところへ戻らないと。
「どうやらとことん、俺たちを仲間外れにしたいらしいな。」
真人と交戦中の悠仁くんのところへ戻ると、東堂くんもそこへ戻っていた。2人とも大きな外傷は増えておらず、東堂くんは無事改造人間を倒せたことが垣間見える。…が、真人と悠仁くんの戦いは拮抗しているみたいだった。
つまり、私たちが加わることで再びこちらが有利になるわけだ。