第16章 第16章 千の篇も一に律される
術式の相性があまりにも良すぎる故に、私と東堂くんは一緒に任務に繰り出される時期があった。
最近は交流会とかいろいろあったし、呪霊が活発になってきたせいで組み合わせどうこうよりもとにかく任務をこなさないといけなくて会う機会がなかったのだけれど。
お互い能力も似ており、共に前線にいた回数も多いのでそれとなく感覚で共闘できてしまう。これ以上はない組み合わせってわけ。
…………性格の相性を除いては。
自分で言うのも変だけど真面目で仕事をきっちりこなす私と、プライベートを優先させる東堂くんとでは割と言い合いになることが多かった。早く帰りたい東堂くんと仕事を最後までやりたい私。帰ろうとする東堂くんを呼び出して何回も嫌そうな顔されたっけな。
しかし今日は違う。
珍しく、今考えていることは同じだろう。
真人を潰す。
ただそれだけを考えている。
だから、触れられたら一撃アウトな真人に触れられる前に、こちらが一撃入れたら回避を繰り返す蜻蛉返り作戦を先ほど実行した。
そんな私たちへの対策を講じたのか、真人はかつて人間であったであろう改造人間とやらを繰り出す。
これが…。報告でしか聞いていなかったけれど、本当に趣味の悪いやつね。
それから同じ方式で真人を潰そうと奮闘するが…
「"多重魂撥体!!!"」
私たちがいた地下鉄の駅構内にある天井は、真人が改造人間を上に向けて投げたことで、ぶち抜かれぽっかりと穴が空き、私たちは夜空に晒された。パラパラと崩れたコンクリートが降ってきて思わず顔を伏せてしまう。
「…っ…"術式反転"、床!!!!」
早々に私は床から離れ、真人によって開けられた巨大な空洞から地上へと飛び上がった。悠仁くんと東堂くんもそれぞれ地上へと上がり、目の前に対峙した改造人間を睨む。
それぞれに改造人間が充てがわれ、戦力が分散される。
厄介な…。
身構える私に対して、東堂くんはもうその改造人間に対して攻撃を仕掛けている。彼なら心配ないから、私も1人で応戦…
と思っていたのに、東堂くんは改造人間にビルまで吹き飛ばされてしまった。彼がぶつかったビルの窓ガラスがガシャンと割れる音がする。
呼出か?いや…目の前にいるこいつも隙がない。まずい、彼を吹き飛ばせるほどのパワーがあるなんて、私じゃ対応しきれない…。
「…なんとかしないと。」