第3章 星はひかれど燎火をもとめる原いん
「で?話って?」
先生の隣に腰掛けた私は甘ったるいコーヒーを先生に返却して、脚を組んだ。コーヒーを取ったのは一泡吹かせたかっただけで飲みたいわけではなかった。
「今日、京都の高専に行ったのは話したよね?今年もやるんだ、交流会。懐かしいでしょ?で、今回はちょっと問題があってね。あのジジイが厄介なことしそうだから針にも来てもらえないかなって。棘にも会えるし一石二鳥でしょ?」
「問題?毎回のことでしょ。去年の乙骨くんに勝る問題児なんているわけ?」
私はちょうど彼と入れ替わりで高専を卒業したけれど噂は常々聞いている。特急に過呪怨霊祈本里香と五条先生を超える呪力が凄まじく、そのせいで交流会では暴走したとか。そんなやばい奴よりもやばい奴なんてもう両面宿儺しか…。
「…あ。」
「気づいた?」
器の子だ。乙骨くんは卒業してから何度か会ったことあるけれど、宿儺の器は対面したことがない。…というか彼が器になってからまだ1ヶ月しか経ってないから会ってなくても当然なのかもしれないけれど。
そういえば伏黒くんからちょっと前にメールきてたな。
《人間の中に呪物が入った場合、針さんの呼出で取り出せますか?》
……そうか、あれはそういうことだったのか。無理って言っといてよかった。宿儺の呼出なんて良くて拒否、悪くて死ぬわよ。
「彼も乙骨くんと同じで先生の我儘で処刑がなくなったらしいね。そりゃ上層部諸々何か企むわけね。」
「そういうこと、物分かりが良くて助かるよ。じゃあ、よろしく頼んだよ。」
そう言うと先生は冷め切ったコーヒーを一気に飲み干してソファから立ち上がった。
「もう行くの?」
いつもはもう少しゆっくりして行くのに。よっぽど宿儺関係のことで忙しいのだろう。
…と、疑問を自己解決したのだが五条先生はくるっとこちらへ振り返り嬉しそうにニタニタと笑っていた。
「あれぇ?もしかして針ちゃんってば僕が帰るの寂しい〜?」
「はぁ!?そんなわけないから!!早く帰れ!!!!!!」
立ち止まった先生を玄関まで押し出そうと肩を掴んだ。先生は変わらず笑顔でおー怖い怖いと言って大人しく玄関まで私に押されて行った。玄関にたどり着くとあっさりと帰っていき我が家に静けさが戻った。