第15章 叫び喚いてもそこは地獄にかわりなし
呪霊が脱皮したその直後、隙を見逃さなかった私たちは一気に畳み掛ける。…が、呪霊が削られている様子がない。
それどころか体力の水を放出し、追い詰められる始末。
「…っ術式反転!!!"床"!!!!!!」
そう言った私の体は宙に舞う。そして近くにあった階段へ一時避難をする。
「あっ、ぶなかった……。」
私の術式反転は"呼出"の反対。つまりは対象と私の距離を突き放す。
対象を床にすることで、床との距離を置き天井へと逃げたのだ。
悪い男が近寄って来た時用とか言って術式反転だけ執拗に教えて来た悟に感謝しないと…。
とか言いつつ本当は普通に役に立つと思って去年の百鬼夜行以降、死ぬ気で特訓したんだけど…。
……まぁ、正式には術式反転なんて高度な真似できなくてカラクリは少し違うのだけれど。あれこれ考えて招いた結果が術式反転と同じだし面倒くさいから術式反転ということにしている。そのときのことを思い出すとかなり長くなるから今は戦いに集中しよう。
私は一息つく間もなく水が引いたらすぐに降りて援護をするが…
呪力が膨大すぎる。まるで大きな岩を彫刻刀で少しずつ削っているかのような感覚で一向に倒せる気配がない。
しかし、呪力が多いのであれば少しずつでも削ればいいのだ。できる限り私たちが疲弊しない形で。
「"呼出"!!!催涙雨!!!!!!」
"あら、久しぶりね"と催涙雨の声が聞こえた気がした。私にとっては特別な日に手に入れたこの呪具を破損するのが怖くてなかなか使う機会がなかった。それに霧雨と術式だけで事足りることが多かったし。
でも、今はそんなこと言ってられない。
催涙雨で縛り上げて、呪力を吸い取り弱体化させながらあとは直毘人さんの、
「私が奴の呪力を削ります、直毘人さん!!」
「ふん、言われなくてもわかっている。」
速度で、潰す!!!!!!