第15章 叫び喚いてもそこは地獄にかわりなし
「真希ちゃん!!!」
「針?」
あれから数分、すぐに禪院直毘人、真希ちゃんと合流した私たち。
無傷である真希ちゃんを見て私はホッとする。
「怪我はしてないみたいでよかった、癪に触るけど直毘人さんもいるし…。」
一方で禪院直毘人もまた無傷であった。彼とは少し因縁のようなものがある。相変わらず図太いじいさんね。
禪院直毘人とは数回しか会ったことしかないが、初対面のときに狗巻家の落ちこぼれか、と真っ先に言われあまりにもムカついたので、それ以降ずっと私もまた失礼な態度を取り続けている。
真希ちゃんの冷遇具合にはかなり腹が立つし。…それに息子はもっと嫌い。
と、うっかりその態度が漏れてしまっていたようで。
「おい、針。なんだその物言いは。お前は昔から…。」
「あー、はいはい。ごめんなさいね。」
しばらく呪霊や呪詛師と会うこともなく、合流していた私たちは皮肉し合い、たまに七海さんの不安そうな表情を垣間見ながら、随分と呑気な会話を繰り広げていた。
…‥のも束の間。
「ぶふぅーぶー。」
頭に布頭巾のようなものをつけた呪霊が現れた。魚の目に口元は魚介類のような独特の、先が鋭く尖った縞模様の太く短い触覚が数本生えている。
全員が戦闘体制になり呪具を構えるが、
「オマエ達。」
「ちと鈍すぎるな。」
禪院直毘人が先に動いた。今この場にいる1人でも、彼の動きを捉えた人はいるのだろうか。
そのくらい、速かった。
なんと早い決着かと思ったが、そう簡単に事は進まず、呪霊はう"っ…と呻き声を上げると嗚咽と共に人間の骨を何個も吐き出した。
こいつは…一体何人喰ったの…。
横たわり這いずる呪霊は何かをぶつぶつと呟いている。
「じょうごぉ…まひとぉ…はなみぃ…」
「はな………みぃ……………」
そしてその声は徐々に大きくなっていき、奴の体には血管が浮き上がってきていた。
まずい…と、奴の呪力が底上げされ威圧的になるのを感じ取るも、怒りで攻撃性が上がっているため誰も手出しはできなかった。
「よくも………よくも花御を、殺したな!!!!!!」
そして怒号と共に、奴は脱皮した。
まだ呪胎だったのだ。脱皮した奴は先ほどの芋虫のような形から、二本足で立ち上がり図体もまた大きくなっていた。
本番はここからだ。私たちは再び呪具を握り直した。
![](/image/skin/separater1.gif)