第15章 叫び喚いてもそこは地獄にかわりなし
「これは…。」
「おそらくまだ犯人が近くにいるはずです。針さんは犯人の捜索を。私は一度彼を安全な場所に運びますので、5分後に呼び出してください。」
「わかりました。」
あまり早くは走れないけれど、私は足早に伊地知さんを刺した犯人を探した。
「…………お…が……たの…ければ…じゃん…。」
ものの数分もしないうちに、誰かの声が聞こえる。これは誰かと会話しているのだろうか?若い男の声だ。
警戒心を高め慎重に近づいていく。しかし、
「やめろ!!!!!」
という怒鳴り声で私は目を見開いた。
この声は…野薔薇ちゃん?
私は陰から息を潜めて状況を把握する。
会話を聞くに補助監督をしていた新田ちゃんが人質に獲られている。下手に私が表立って、同じように野薔薇ちゃんも人質にされる可能性がある…先に2人を保護してからじゃないと戦えない。……七海さんが戻ってくるまで残り20秒…。
つまり、今の最善策は
「"呼出"新田明。釘崎野薔薇。」
「あ…。」
「ごめん、遅くなった。」
数メートル離れていた私は保護するように怪我人の2人を抱き抱える。これ以上あいつに傷つけられないように。
頭の悪そうな金髪サイドテールの呪詛師。申し訳なさも感じないが強いとは到底思えない。私1人で十分だけれど…。
…約束の5分が経った。
「"呼出"、七海健人。」
現れてすぐに状況を把握した七海さんは奴を睨みつけたまま静かに歩き出す。
「いいんだっけ、黒じゃないスーツも殺して。」
薄気味悪く笑う奴に、七海さんは反応することなく物音一つ立てず、奴の後ろに回り込み
「仲間の配置と数は?」
と聞いた。