第15章 叫び喚いてもそこは地獄にかわりなし
伝達、申請はすぐに終わった。私がついて来た意味なんて全くなかったほどに。
「七海さん、そろそろ聞いてもいいですか?」
「何をですか。」
私たちは現場指揮および呪詛師の殲滅に戻ろうと歩いていた。というかこんなに悠長に歩いて良いものなのだろうか。
なんだか今日の七海さんは以前仕事を一緒にしたときの様子と少し違う。正直言って、疑問しか浮かばなかった。
「私を連れ出した理由です。何かありますよね。あの時、最善の策は私をあの場に残すことだった。そうすれば七海さんをすぐに現場に呼び戻せた。どうして私を一緒に?」
…。しばらく沈黙する七海さん。かちゃり、と眼鏡のブリッジを押し上げると
「…………はぁ。」
盛大なため息をついた。
「え。」
今ため息ついた…?何かしてしまったのだろうか、それとも実は私が1級術師に相当する実力がないと思っているとか!?
いやいやいや、でも私を推薦してくれたの七海さんだし。猪野に悪いから口利きで形式上日下部さんに頼んだけど、もしかして後悔してる、私を推薦したこと、今まで言えなかったとか?ああどうしよう、やっぱり私…。
と私の顔が真っ青になっていく様子に気がついたのか、七海さんは重たそうに口を開いた。
「無粋なのであまり言いたくはありませんでしたが…。」
「あなた1人の身体ではありませんから。戦いは避けるのが無難でしょう。」
「あ…。」
………七海さんは、知ってたんだ。私が妊娠していることは悟以外、誰にも言っていない。たった1人を除いて。
「………お喋りな同期ですね。」
「ええ、本当に全く。」