第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
「あいつは悪人だよ。」
そんなはずがない。夏油傑は五条悟にとってただの悪人、それだけで済むような人間ではないはずなのに。
私は視線を落として泣きそうな声で問いかけた。
「………親友なんでしょ、唯一の。」
五条悟にとって代わりなんていない唯一無二の存在。彼と対等でいれた人。特別な人。
たった一言、罪人という言葉だけでは言い表せられるはずがない。
「私だって、棘や、大切な人たちが呪詛師になろうと大罪人になろうと死んだら悲しいわ。」
ああ、私は今どんな顔をしているのだろう。また瞳が熱い。熱くて潤んだ瞳が雫を溢してしまいそうだ。どうして私が泣くんだろう。情けない。私の顔は床に向いたまま。先生の顔が見れない。
「自分にとって特別な人が死んだときに感情が大きく揺さぶられるのは誰だって同じ。」
きっと五条悟という人間は、私が思うよりもずっとずっと大人で、私たちのために何かを我慢している。
私たちが彼をこんな風にしてしまったのに責められるわけがないでしょう。
それに、私にとって五条悟という人間もまた大切な人なんだ。例え弟たちを傷つけた大罪人だとしても、傷つく姿は見たくない。
「ごめんなさい。」
「なんで針が謝るのさ。」
「言ったでしょ、大切な人が大罪人でも死んだら悲しいって。それと同じ。大切な人にそんな顔をされても、悲しい。」
「……ありがとう。」