第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
「…そんなの知らない。」
「俺の勝手な都合だよ。」
私の言葉をすぐさま自分の罪悪感を帯びた言葉で覆い隠す五条先生。
私だって知ってた、五条先生が非道な人間じゃないことに。無慈悲に弟たちを傷つけたわけじゃないことに。
だけど、それでも…
「私は、知らないの。親友なんて、信頼できる存在なんていないの。」
私は親友という存在を理解することができない。
「だから…親友が死んだ先生の気持ちもわからない。」
自分の怒りばかりきにして、五条悟の抱えていたものに気がつけなかった。
親友が闇に堕ち、その果てに死んでしまった。出会った頃、へらへらと笑っていた五条悟はどんなことを思ってこれまで呪術界に存在し、過ごしてきたのだろう。
"負の感情が強まるほど呪力は上がる"
五条悟の強さに、歯止めが効かなくなったのは誰も理解のできない果てしない場所に心の闇があるからなのではないか…。
「…そんなの、知らないの。わからないの…っ!!」
声を荒げた私の言葉を、先生は何も言わずに聞き入れる。私は起き上がり、ベッドから立ち上がる。いつのまにか傾いていた日は落ちて、カーテンの隙間から見える空は真っ黒に染まっていた。