第43章 まちがいさがし

赤井side


夢を見た。
遠い昔、イギリスにいた頃、同級生にこの目立つアジア人の顔立ちを揶揄われた時の夢。

思えば俺は、ずっと普通とは違っていた。

両親の職業も、そして父親がいなくなったことも
今こうしてFBIとしてあの組織を追っていることも。

幸せなんて、サラと会う前までは、あの宮野明美と過ごした偽りだらけの一瞬の時間しか、感じたことなかった気がする。

人間的にも、どちらかと間違いの方だと思う。

感情を表に出すのが下手で、人の気持ちを読むこともどちらかといえば苦手だ。


そんなことを思っていると、不意に香る甘い匂い。
ゆっくりと目を開けると、そこには目をクリッとさせながら俺の顔を凝視する女がいた。


「サラ…起きてたのか」

「うん。赤井さんの寝顔見てた」

「何だそれ」


ふふっと幸せそうに笑うサラ。

俺は、サラの手に自分の指を重ねた。
ぎゅ…と握ると、サラも少し弱い力で握り返してくる。

こいつは、強い女だと思っていた。

だが、いざ一緒に暮らしてみると、全然そうじゃなかった。


何の変哲もない日常にいちいち驚いたり、感動したり、ただ髪を撫でるだけで幸せそうに笑う。
そして、抱きしめるとすぐ泣く。
意地悪を言うとしゅんと拗ねるが、すぐにまた甘えてくる。


そうやって、他の誰にも見せない表情を、もっと俺に見せて欲しい。