【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第39章 BlankSpace ☆
「いらっしゃいませー!!」
「…サラちゃん。
今日はいつにも増して元気だねえ」
ポアロのマスターが安室さんにそう言ってるのが聞こえてきた。
だって、そりゃ、元気にしてないと死にそうだから。
まさか、わたしが恋人の浮気現場を目の当たりするとは思ってなかったよ?
芸能人の不倫とかでこういうネタよくあるけど、自分が当事者になったらもうキツすぎる。
何も考えないように、無心で働く。
そうすると自然に声は大きくなるし、笑顔も大げさになる。
「元気すぎて、心配ですけどねぇ」
安室さんがわたしを見ながら言う。
やっぱり安室さんには何でもお見通しなのか。
じゃあどうすればよかったの?
その場で泣いて喚いて、セリーナさんにつかみかかればよかった?
赤井さんをグーで思いっきり殴ればよかった?
それとも、泣き崩れて動かなければよかった?
信じてたのに。
なにもないって、信じてたのに。
ヤバい。
考えると涙がどんどん迫ってきて、わたしはまた大きな声でいらっしゃいませー!!と声を張り上げて誤魔化した。
忙しい時間帯が終わると、マスターは仕入れのために店を出て、店内はわたしと安室さんだけになった。
「…で、何があったんですか?」
「なにもないよ」
「いや、流石に何かあったでしょう?
昨日も電話で様子おかしかったし」
安室さんが洗ったグラスを拭きながら、優しい声で言った。
「何があった?」
甘えたくないのに。
甘えちゃだめなのに。
そんなに優しくしないで…
わたしからまた涙が溢れそうになった時、店のドアベルが鳴った。
カランコロン
「あ!いらっしゃいま…」
お客さんだ!と思いそちらを見た瞬間、わたしから血の気が引いていく。
そこに立っていたのは、セリーナさんだった。