【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第6章 シアワセ
眠っている間、また違う夢を見た。
初めて好きになった彼は
悪い男だった。
6年前 18歳の頃
「ん…」
「悪い。起こした?」
「…タクミ、もう行くの?まだ夜中の2時だよ。」
「うん。仕事残してきた。
お前はこのまま泊まっていけよ。」
そう言って、まだベッドの中にいるわたしのおでこにキスをして、彼は仕事の電話をしながらホテルのスイートルームを出て行った。
パタリと閉じられたドアを見つめながら、わたしはそのままポスッとベッドに身を埋め、タクミの残り香を嗅いだ。
彼と出会ったのは17のとき
両親を亡くして、毎日投げやりな生活を送っていた時、街で偶然彼の落とした携帯を拾ったことがきっかけで知り合った。
後に知ったのは、彼が日本で有名なロックバンドのベーシストだということ。
アメリカにレコーディングで来ていたところだったと言う。
お礼がしたいと、彼が運転する車の中で不意打ちでキスをされた。
これがわたしのファーストキスだった。
人を愛することも、愛されることも忘れてしまってたわたしは、
久々に感じる人の温もりに、涙が溢れた。
「悪い。嫌だった?」
「ううん。もう一度、して?」
彼の左手の薬指に光るものが見えても、
気づかないふりをしていた。
今思えば、単純に見た目が好みだったんだと思う。
そのまま彼が宿泊するホテルに移動し、初めて、男の身体を知った。
10も歳上の彼が、ベッドの中だけでくれる幸せに満たされて、彼がアメリカに来る日を指折り数える毎日が続いた。