【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第6章 シアワセ
夢を見た。
両親がまだ生きていた頃の夢…
わたしがまだ5歳だった頃。
こんな風に風邪を引いて、ママがあったかいお粥を作ってくれた。
食べるとたちまち元気になる魔法のお粥。
パパはベッドの中で退屈しないよう、わたしが眠るまで隣で本を読んでくれた。
幸せで温かくて、大好きな両親。
その両親が、わたしの前からゆっくりと消えていく。
周りがだんだん真っ暗闇になって、5歳のわたしは必死に両親を探す。走っても走っても真っ暗闇で、二人の姿は見えない。
神様…わたしから幸せを奪わないで
わたしからパパとママを奪わないで
そう言って泣きながら、また走った。
「サラ…」
誰かの声が遠くに聞こえる。
誰…?
「サラ。しっかりしろ」
誰なの?
「サラ」
ハッと目を開けると、心配そうに見つめる赤井さんがいた。
「悪い夢でも見たか?」
「赤井さん…」
赤井さんの顔を見てほっと安心し、思わず赤井さんの首に腕を回してしがみついた。
「ありがと…悪夢見ちゃって…つらかった。」
動悸が激しくて、落ち着かせるために必死に深呼吸をした。
「薬、もらって来た。
あと、何か食べた方がいいと思って」
そう言って赤井さんが出してくれたのは、土鍋に入ったお粥だ。
「食べられるか?」
「うん。食べたい」
身体を起こして赤井さんからお椀とスプーンを受け取り、
少しだけすくって口に運んだ。
母の味とは全く違ってたけど、これからはこの味がわたしの魔法のお粥になるんだね。
「おいしい」
そう言って笑うと、赤井さんはわたしの口元についたお米をぺろっと舌で取った。
かあっと顔が赤くなって、熱が更に上がりそうだ。
差し出された薬を飲み干して横になると、赤井さんがおまじないみたいにおでこにキスをしてくれる。
「早く元気になれ」
「手…繋いでて…くれたら明日には治る」
全く根拠のないことを、ただ手を繋ぎたいから言った。
素直に、手を握って欲しいって言えばいいのに。
「ああ」
赤井さんはそれだけ言って、わたしの手をぎゅっと握った。
手を握られると、安心する。
一人じゃ無いって思えて、安心する。
そっと目を閉じると、わたしはスッと眠りに入った。