第35章 ハルウタ　☆

「やっとこっちを見た」

沖矢さんはわたしの頬を撫でながら言う。
どう言う意味かわからず、わたしは首を傾げた。


「？」

「ずっと、向こうばっかり見ているから」

「そりゃ、観戦してるんだから当たり前でしょ？」

「…ただ観戦してるだけならいいんですがね」


沖矢さんはそう言いながら、もう一度顔を近づけてくる。


「ま、待って…試合観ようよ…」

「待てない」


あと数センチでまた唇が重なる。その時、


ゴォーーーール！！


場内にDJアナウンスが鳴り響き、観客たちはスタンディングオベーションで立ち上がって抱き合ったり拍手をしている。

鳴り止まない比護コールに、わたしは比護さんがゴールを決めたことに気付いた。


「ちょっと！ゴール見逃したじゃない！！」

「君が悪い」

「なっ！なんで！！」


沖矢さんは、ザマアミロと少し微笑みながらこちらを見てくる。
結局試合は1:0でビッグ大阪の勝ち。

そのたった一点のゴールの瞬間を見逃したわたしは、プリプリと怒りながら、ふんっ！と沖矢さんからそっぽを向いて、アフターパーティーの会場に向かった。