第33章 If This Was a Movie　☆

「なんで？わたし、好きなの。
コッテコテのラブロマンス！」


まるでさっきの仕返しのようにそう言うと、サラは本当に胸焼けしそうな甘いパッケージのDVDを選んだ。


「これにする」

「…」


俺はタイタニックですら、甘すぎて胸焼けがしたんだ。
それ以上にヤバそうだ。

パッケージに主人公カップルのキスシーンがどーんと載っている。
ロクな映画じゃないだろう。


あからさまに怪訝な顔をする俺をみて、サラは挑発するように言う。


「あれ〜？
もしかして沖矢さん、ラブストーリーは恥ずかしくて観れないタイプ？
ふふ。意外とお子様なのね」


その言葉にカチンと来た俺は、サラが持っていたDVDを取ってかごに入れた。
８も下の女にお子様なんて言われて、俺が黙っていられるはずがない。


「いや？観ますよ？
なんならその映画と同じことをサラにしてあげますよ」


冷静になると、なんてバカなやり合いをしているんだと思った。

普通に自分の観たい映画を選べばよかったのに。

謎の意地を張った結果、お互い特に観たくもないのに相手が苦手な映画をセレクトするという、なんとも不毛な買い物をして店を出た。