【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第5章 TiAmo ☆ ♪
「…安室さんは、彼女とかいないの?」
「いませんね。僕の恋人は、この日本だから」
「ふ…。安室さんのこと好きな女の子は大変だね。
そんな強力すぎるライバル」
そう言いながら、また渡された水を喉に流した。
「…なんで、人って誰かのことを好きになればなるほど、欲張りになるんだろう。」
独り言みたいなわたしの言葉を安室さんは何も言わずに聞いている。
「ひとりで、平気って思ってた。
だって今までずっとひとりだったから。
誰かと心が繋がるだけで満足って思ってたのに…
どうして、その人の過去まで欲しくなるんだろう。」
酔ってるのか、自分の中のモノローグが全部口から音を発して出てくる。
「自分の秘密は話せないくせに、相手のことは全部知りたくなるの…。」
ひとりで話しながら、涙が溢れてきた。
「よくわかりませんが、相手も同じことを思ってるんじゃないですか?」
「え…」
「その人も、あなたのことを全部知りたいと思ってる気がします。過去も未来も全部手に入れたい。
人を好きになるってそう言うことでしょう」
「…なんか、まさかあのバーボンに励まされるとは思ってなかった」
ふふっと笑いながらそう言うと、安室さんは少し冗談っぽくわたしの頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「あまり生意気な口聞くと、襲いますよ」
「やだ。襲われるなら、あ……沖矢さんがいい」
自分のまずい言い間違いにすぐ気づいて訂正できるほど、だんだん酔いが覚めてきたようだ。
「そろそろ、出して大丈夫そうですね。
…もう22時か。どうします?
帰りたくないなら、阿笠博士の家にでも…」
「ううん。沖矢さんとこ帰る。
なんか安室さんと話してると無性に会いたくなった」
「本当に、いい加減にしてくださいよ」
呆れたようにそう笑うと、わたしの座席のシートを元の角度に戻した後、安室さんは車を発進させた。
しばらく窓の外を眺めてたわたしは、車の心地いい揺れにゆられ、いつのまにか意識を手放していた。