第5章 TiAmo ☆ ♪

「お姉さん。そんなに飲んで、どうしたの？」


つい今入ってきた、スーツを着たサラリーマン風の男がわたしの肩を抱いた。
わたしは無視してお酒を飲み続ける。


「好きな男に振られちゃった？」

「…うるさい。関係ないでしょ。」

「そんな男忘れて、俺と飲もうよ。場所変えて」


そう耳元で囁く男に苛立ち、わたしは肩にまわされた腕を掴んで勢いよく捻り上げた。


「いてっ！いてててて」

「ナンパする相手は慎重に選んだら？」


限界まで捻り上げた後に手を離すと、男はその場で蹲った。


ほらね。こういう時普通なら、ヒーローが助けに来てくれるでしょ？
けどわたしは、自分で対処できてしまう。
可愛くない女だ。


わたしはカウンターに置いてあった飲みかけのジンと、男が注文したテキーラをどちらも一気に流し込み、カウンターにお金を置いて店を出た。