第30章  I belong with you ♪

安室side


サラはわかりやすい。
そう思っていたけど、きっと僕もわかりやすい男なんだ。

トリプルフェイスかつポーカーフェイスと謳っているけど、サラは僕の様子がおかしいのをすぐに気づいた。

そして、不安そうに僕に必死にしがみついてくる。

自分の気持ちを押し込めて、僕に溺れようとしてる。
そうじゃないと、僕に申し訳ない。そう思ってる。

わかっているのに、それでもサラが好きなんだ。


僕がバスルームに入ると、先に入っていたサラは、入り口に背を向けて湯に浮かんでいるアヒルのおもちゃで遊んでいる。

後ろから見える華奢な肩が、何故かいつもより小さく見えた。

そのサラの後ろに、僕が足を踏み入れてゆっくり浸かると、サラが前を向いたまま言う。


「なんか、くすぐったいね」


そんなサラが、好きで好きでたまらなくて、僕はサラを後ろから抱きしめた。

パシャ…と湯が揺れて、素肌が触れ合う。
こんな日がずっと続けばいいと思っていたのに。

まだ答えは出ていないのに、まるで最後の夜みたいだ。


「零…？」

「…」


サラがあまりにも優しく僕の名前を呼ぶから、目頭の奥が熱くなる。